知識だけでは売れない


商売は、顧客が喜ぶ答えを出して信用を付けないと、長続きしないです。

某音響機器販売会社の営業担当から伺った話しです。

チケット売り場に納めたPA装置がおかしい(ハウリング)というので技術者を差し向けたところ、オーナーにフィルターなどを購入して改善するしかないと言って帰ってきたそうです。

その後、オーナーから営業担当に「また高価な機材を購入しなければならないのか?」と不満の電話があって驚いたと言います。

営業担当は、「そのご心配はございません。売り場の方に、マイクを口に近づけて大きな声で応対するように指導してください」とアドバイスして一件落着となりました。

 

技術者など専門家は営業に不向きと、よく言われます。小難しい専門用語で性能だけをアピールしたのでは客から敬遠されてしまいます。

 

歌舞伎や能楽などの団体客獲得の営業担当も同様です。その道の通が営業すると全く売れないのです。知っている知識を詳しく説明したりして、小難しい芝居だと思わせてしまうからです。演劇の営業は、評判がイマイチだからやることなのです。

 

某劇場に、演目も役者も決まる前から売ってくるという、凄腕の営業担当がいました。嘘か真か定かではないが、"演目は?と訊かれて歌舞伎ですと答え、俳優は?と訊かれて、まだ決まっていませんが超一流の役者が出演します と答えて売ってくるという伝説です。

このように、問答に長けていないと営業は務まらないということでしょう。

 

もう一人、友人に好成績のプロ機器営業担当がいました。

営業に訪れ、しこたま世間話をしてから、「この機材、私にはよく分らないので、とりあえず置いていきますから使ってみてください」と言って帰ります。富山の置き薬同様、これで売れるのですから驚きです。プロに能書きをたれては野暮ということでしょう。

バブル期のスピーカの売り方は、「このスピーカを持っていると仕事が来ますよ」でしたが、バブルが弾けてから借金だけが残ったという愚痴をあちこちから聞きました。