裏方の生き甲斐(劇場音響技術者教書:兼六館出版から)
民衆はなぜ劇場にわざわざ足を運び、芸能を楽しむのでしょうか。
人間には、5段階の欲望があると言われています。
次からは人間だけの欲望です。
ヨーロッパの戦後は、最初に建てられるのは教会と劇場と言われています。
アフガニスタン紛争が終わったときも、すぐに映画館がオープンし、そこに民衆が殺到しました。
ニューヨークの9.11同時多発テロの直後も、ブロードウェイではミュージカルを上演していたのです。荒廃した心、傷ついた心を癒すためです。
人間は希望を失ってしまったらおしまいです。その希望を与える力を持っているのが演劇であり、コンサートや映画など、さまざまな芸能です。
舞台で演じられる芸能は「祭り」であり、出演者は「みこし」で、それを担ぐのは裏方です。裏方は全員、足並みを揃えて俳優やミュージシャンを担ぎ、自分たちも楽しみ、そして民衆を楽しませます。
演劇も音楽も、観客に向けてメッセージを送ることは大事ですが、同時に娯楽でなければなりません。芸能は、観客をリードし観客を教育する面もありますが、それに傾きすぎては恐いです。
また、観客の厳しい眼は芸能を育てる大きな力になっています。