先駆者は孤独で辛く、それが楽しい(2005年筆)

 

びわ湖ホールの小野隆浩さんがオペラに音響デザイナーを確立させる前、日本のオペラ界は音響面で困っていました。

それまでは、オペラ関係者たちは音響について困り果てていましたが、その時期だれもオペラの音に踏み込めなかったのです。

 

小野さんはそのような分野に、音響デザインというジャンルを築いたのです。

当時は、足を引っぱる同輩、けなす先輩、頭の固い音楽評論家などがウヨウヨしていましたから、悩まれたことと思います。

 

私も40年前に歌舞伎のSR(サウンドリインフォースメント=拡声)を始めたとき、新聞や演劇雑誌たちから「噴飯物」とか叩かれましたから、小野さんの辛さは理解できます。

 

先駆者は叩かれるものですから、それを覚悟でやらなければならないのですが、叩かれるというのはけっこう楽しいものです。このとき孤独を感じますが、俺たちを「注目」している、「意識」していると喜べばいいのです。これがプロの宿命です。

 

このように、新しい分野を切り開くこと、新しい組織を作ること、新しい作品を作ること、これが創造というものであって、生き甲斐を感じます。